ツマは言語聴覚士

復職できるの?

Posted on 2019年3月26日

休職期間は主治医には決められない

オットが回復期リハビリ病院に入院していたとき、会社の方から医師の診断書を提出するよう言われました。それがないと、休職が認められないと。当然ですね。すぐに主治医にお願いし、書いていただいた書類を送ったところ、人事部から連絡がありました。「これでは受理できません」……え、何か問題でも?

どうやら診断書には「○月○日までは出勤できません」という文言がないといけないらしいのです。でないと、休職が認められないと。なるほどなるほど。そういうわけでよろしくお願いしますと主治医に伝えたところ、「いやあ、それは書けませんよ」……な、なぜにー?

「いつまで働けない、などと期間は決められないですから」というのが主治医の主張で、当時の私はそれが理解できずに戸惑いました。「でも書いてもらえないと休職が認められないんですよー」「だったら私が人事だか総務だかの担当者に直接説明します」「いやいや先生、それはお待ちを」と揉めているうちに、会社の方が「日時がないのは『半年間』と解釈します」と受理してくださり、その半年が過ぎたときにまた同じ騒動が起こり……^ ^;

最も大切なのは、職場の理解

現在私は言語聴覚士として、失語症の方のリハビリをしています。復職に向けてのサポートもしています。

今思い返してみると、当時の主治医の対応はとても誠実で、心あるものだったとわかります。

失語症は「完全に元通り」になることが難しい後遺症です。復職しても、前と全く同じようには働けません。たとえばオットの場合は、特に読み書きが難しくなったので、書類やメールなど文章を扱う作業は非常に困難です。
でも。
書類の内容を職場の方が分かりやすく説明してくだされば、オットもある程度は理解できます。また文章を扱わない作業が中心なら、それほど問題なくできるかもしれません。

つまり。

いつまで働けないか、いつから働けるようになるのか。それには、職場に受け入れ体制が、大きく影響する。だからこそ、あのときオットの主治医は「人事に直接説明する」と言ってくださったのです。ああ、お願いすればよかったなー。

言葉の問題以外も(たくさん)ある

とはいえ、職場の理解があれば必ず復職できる、というわけでは残念ながらありません。
まず失語症でいえば、症状が重度の方は復職が難しくなります。また、脳卒中の後遺症には失語症以外の症状もあるため、その見極めも必要です。

高次脳機能障害(失語症は、その症状のひとつです)の就労準備性(働くための基本)として、東京慈恵会医科大学附属第三病院の渡邊修先生は、8項目をあげています。

1 症状の安定
2 働きたいという強い意思(自発性)
3 日常生活の自立
4 5〜6時間の作業×1週間の体力
5 交通機関を1人で安全に利用できる
6 高次脳機能障害を正しく説明できる(病識)
7 障害を補いながら仕事ができる(代償能力)
8 感情をコントロールできる(社会性)

本人が「こうしてほしい」と伝えること

失語症や高次脳機能障害は、外見からわかりづらい障害です。
オットの場合は、体の麻痺が残っていないため、外からは以前と変わらないように見えてしまいます。

けれども、復職を考え出したころのオットは前出の「就労準備性8項目」のうち、「4体力」「6正しく説明」「7代償能力」が十分ではありませんでした。復職準備期間は、この3項目を整えました。

そして、復職直前には、自分の「取扱説明書」を作り、あらかじめ職場の人に読んでもらいました。
https://shitsugokun.com/blog/3549/https://shitsugokun.com/blog/3549/
オットの状態は本人から発信していかないと、わかってもらえません。
逆を言えば、本人から伝えることで、働くことが少しラクになるはずです。

こうして書くとねー。オットはとてもスムーズに復職できたようにみえますが、それでもまあ、いろいろありましたわ^ ^; その顛末はどうぞ、ブログ記事の「復職」タグのついてる記事をお読みになってください。
https://shitsugokun.com/blog_tags/%e5%be%a9%e8%81%b7/

また現在私は、言語聴覚士として(および当事者家族として)、「失語症と仕事を考える会 ステップ」という会をしています。
https://kawasaki-st-step.jimdofree.com/
失語症と仕事に御興味のある方は、どうぞこちらもご覧ください。

 

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みなさまからのコメント

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  1. おさむ

    私の息子も44になった時、脳梗塞で失語症と診断され、今月、リハビリ施設に入ることになります。読んでいる同じような経過で、大変参考になります。
    ところで、今一番心配なのは、休職期間が長くなると給料がどのくらい減るのかです。参考になる話があれば教えてください。現在44歳、大手電機メーカーの課長で、部下が9人います。2か月前には、営業本部長、支社長、同期が留守宅で一時帰宅の本人に会い、現状を見てもらいました。ほとんど通じない言葉だったようです。長女高3、次女高1、長男小3で生活費が心配なもので、よろしくご教授ください。

  2. 米谷 瑞恵 Post Author

    おさむさん
    コメントありがとうございます。
    息子さんが休職中でいらっしゃるんですね。
    お子さんが3人でまだ小さいとのこと、これからの生活も心配ですね。
    ご質問の件ですが、休職中は「給料」は支給されません。
    ただし医師の診断書を提出するなどすれば健康保険から「傷病手当金」が支給されます。
    これは給与の3分の2の金額で、最長1年6カ月間です。
    (企業によっては、独自に手当金の付加金があったり、期間が長かったりするところもあるようです)
    また、それ以降は障害の程度によっては障害年金が受けられます。
    息子さんはメーカー勤務ですので、障害厚生年金に該当するかと思います。
    受給額は、年金を納めていた期間や障害の程度によって異なりますが
    残念ながらそれほど多額ではありません。
    詳しい金額は、お近くの年金事務所でお問い合わせください。
    息子さん、復職できるといいですね。

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