高次脳機能障害の仲間(入院中のこと)
Posted on 2013年1月25日
失語症というのは、高次脳機能障害のひとつです。
高次脳機能障害というのは
「高い次元の脳の機能の障害」のことです(そのまんま)。
脳出血(脳梗塞・脳挫傷)の後遺症は、
脳のどの部分に損傷をうけたか、よって異なるのですが
記憶や注意、感情や行動などをつかさどる部分がやられると
たとえ体に麻痺が残らなくても、社会的生活に影響がでてきます。
ザックリ私なりに解釈すると
「高次脳機能障害=外からみてわからない障害」で
失語症も、ここに含まれるわけです。
オットが入院していたリハビリ病院にも
高次脳機能障害の方がいました。
仮にコージさんとお呼びしましょう(^ ^)
このコージさん、年のころは恐らくオットと同じ40代後半。
入院されたときから、普通に歩いてご飯もひとりで食べていたので
「軽症なのかな。すぐに退院されるのかな」と思っていたのですが
数週間たっても、その気配がない。
そのうち、オットの病室にやってくるようになって
そうか高次脳機能障害の方だと気づきました。
コージさんは、自信満々にオットのベッドに近づいてきて
「あれ?」と言います。
コージさん「ここじゃなかったかな?」
私「違いますよ〜。お隣の部屋ですよ〜」
コージさん「そうだった? いつから?」
記憶とか方向感覚に障害があるのでしょうね。
ちなみに高次脳機能障害は、認知症の症状と似ているので
年輩の方に、この後遺症が残ると
「ボケた」と間違えられることも多いようです。
コージさんは、ときどき病棟から脱走します。
逃げようと思っているわけではなく
「ちょっとトイレに」と思って立ち上がり
歩き出した瞬間、迷子になって
どんどん見当違いな方向に進んでしまう。
気がついたら隣の病棟の3階に、という状態で。
その頃、オットは建物内を歩き回る許可をもらっていたので
売店やら別棟やら、リハビリもかねてよくウロウロしていました。
すると、見つけちゃうんですね。
コージさん。
なぜに? こんなところで? というような場所で。
リハビリ病棟に連れて帰らなければ。
自分は入院中だけど、人の役にたてるのだ。
オットの心に沸き起こる使命感。
よし!
よし!
よしっ………ええっと。
どうやって声をかければいいの?
しかたがないので、とにかく追いかけて
コージさんの肩をポンポンと叩き
オット「すちえおですよー」
コージさん(ふりかえり)「ん?」
実際にその現場に居合わせたことがありますが
50歳前後のおっさん2人が寄り添いながら
ゆっくりゆっくりリハビリ病棟に戻っていく様子に
すこーしだけ、ジンとしました。
言葉を交わさない、いや交わせない友情が生まれたようで。
先週、オットは言語リハビリのために病院に行き
偶然そのコージさん(まだ入院中)とお会いしたそうです。
「ぼくのこと、覚えてないみたいだった……」
そうか。がんばったのにね。